テトラ クロダイ船釣考テトラ



 
 この地区の船からのクロダイ釣りは、春と秋に狙います。クロダイのことをハゴと呼んでいます。御多分にもれず、この魚を釣るのは難しい部類に入ります。春のゴールデンウィーク前後の時期に渥美沖の外海で大型ハゴを、秋には9月下旬から11月中旬にかけて伊良湖水道や、師崎前で落ちのハゴを釣ります。大型狙いなら春ですが、釣りの面白さ、味の点からいってもマニアックな秋のハゴ釣りの方がより好きです。秋のハゴは外道?で釣れるマダイよりも、刺身にして比べると分かりますが、美味しいと思います。

 釣り方ですが掛かり釣りで船を固定して撒餌をし、魚を寄せて釣ります。いわゆる、掛かり釣りです。撒餌は船頭さんがやってくれます。撒餌のやり方(量、タイミング、撒餌の棚など)で釣果はかなり違ってきますので、釣り人にとってハゴを釣る前に腕の良い船頭を釣らなければいけません。

 仕掛けで特徴的なのはオモリ付きの鋳込みハリ(写真)を使うことです。エサのエビが安定するように、底に餌がいくように、またハリスを張る為です。名古屋天秤から下にハリス2〜3号を1ヒロ付けます。初期の魚がまだあまりスレていない時期や、潮通しが良いときは2本バリ仕掛けにします。

 天秤から1ヒロ半から2ヒロ上に枝を出せばハマチやマダカ、真鯛のうれしい外道も狙えます。道糸は伸びない新素材がアタリや底取りが分かり易いのですが、その分アワセのタイミングが早過ぎたり、ハゴの食いが悪いこともあります。

 どの船頭さんも多分ほとんど「手釣り」、すなわち竿を使わない釣りをします。海底の様子やアタリがダイレクトに糸を通して伝わって来るからです。仕掛けが天秤にからまっている時も変な感じが指先に伝わってきます。マダカ釣りでは魚が近づいた時、餌のエビが跳ねるのが分かるぐらいダイレクトです。竿釣りではそこまで分かりません。竿もリールも要らないので安上がりでしかもアタリも取りやすい、と良いことばかりですが、欠点は細い道糸を使えないことと、糸が船上でもつれてクシャクシャになることです。

 タイコリールとスピニングリールでは巻いた糸の出方の違いから縒りの出易さに差があるように、手釣りの糸巻きも、いつも同じ方向から糸を出すようにした方がいいようです。乗合船の貸し竿やレンタルスキーと同じで、手釣りの道具も船で貸してくれる物に、多くを期待してはいけません。当然の事ながら上を目指すなら、自分で手釣りの道具くらいは持参しましょう。釣った魚の満足感が違います。竿釣りでゲット、ゲットなんて言っているより、男は(女も)黙って、手釣りで黙々と釣りましょう。ちょっと暗いけど。

 ちなみに、マッキーは潮の流れで短竿にしたり手釣りにしたり、潮流によって竿を変えたりと、色々やって楽しんでいます。

 ハゴのアタリは「重み」です。なかなか釣れないといってもハゴがズルイわけではありません。危険を冒してまで、すぐに餌を取ろうとしているわけではないのです。餌を食べる時、餌をくわえてすぐに引っぱらないだけで、その結果として「重み」のアタリが出るわけです。

 「もたれ」とも言います。会話をしていたり、よそ事を考えていると、たぶん分からないと思います。指先や竿先に注意を集中させます。この「重み」を感じて来たら、糸を少し送り出して、2,3手糸を手繰ると、今度はズッシリした重みに変わります。最初はあんなに僅かな重みが「ググッ、ググッ」とリズムのある下品な引きになり、水面下まで抵抗してくれます。うれしくて、外れないか心配で、真剣で魚とやり取りする「釣師ならでは」の時間です。 魚が水面に顔を出せば、もうこっちの物。「掛かりどころ」を確かめて、糸を持って船の中に放り込みます。

 「掛かりどころ」とはハリが魚の口の何処に掛かっているか、ということです。つまり、「重み」を感じて早くあわせて(手繰って)しまうと、タイミングが早くて、釣れないか釣れても、上顎の硬口蓋に掛かり、釣り上がってくる途中で外れやすいのです。魚が大きい程、骨も硬いからハリが刺さりにくくなっています。2年生ぐらいですとハリが貫通しますが。

 ベストタイミングであわせると、口角に掛かり貫通しやすく、外れることはありません。ただし、口の皮一枚てな事も有りますから、大きかったらタモで掬った方が無難です。偶然、棚を確かめようとしたり、餌の交換をしようとした時、糸を手繰ると魚が掛かっている時があります。そんな時はあわせのタイミングが適当な時なので、釣り上がってくる途中、よく外れます。魚の引きもちょっと違い、外れそうな予感がします。

 餌も撒餌もウタセエビです。餌のつけ方は針の軸がエビの正中にくるように鼻から刺して角の根元に出します。針先がほんの僅か出る、というよりエビの角の根本で針先が固定されている感じです。

 釣っている棚が高い時、明確なアタリで釣れることがあります。こんな時は長く続かないので、少し棚を低くした方が結果的にはたくさん釣れます。餌のエビが半分切られてハリに残っている時も棚が高いときが多いようです。ちなみに餌の残り具合で食った魚の予想をするのは海底の情報源となります。

 釣れた魚は水圧で腹に空気が一杯になっているので、カンコに入れても上手に泳げず、弱ってしまいます。ガス抜きをします。空気を抜く串で肛門から腹の皮に沿わせて、串をウキブクロに入れ、軽くひねるか、腹を押さえるとガスが抜けます。上手に出来なければ、船頭さんにやってもらいますが、釣れ盛っている時に船頭の釣る手を休ませる事になるので、自分でガス抜きが出来るように、教えてもらった方が良いと思います。

 何年やってもなかなか上手くならないハゴ釣りですが、奥の深い面白い釣りだと思います。




鋳込みバリ

上は釣具屋で売っています。
伊勢尼バリにハンダを付けた物です。
下のハリは自作物(マゴチ用)
好きなハリや重さの物が作れます。




作り方は
カミツブシでハリに仮着しておき
切ったハンダを写真のように上に乗せ
ピンセットで摘んで
炎の上で加熱すれば
スーとオモリの割れ目に
ハンダが溶けて
流れます。
慣れれば簡単。
加熱し過ぎないように。

ハリとカミツブシの大きいのを作れば、
マゴチ釣りの時に使えます。





もっと軽めのハンダを鋳込んだハリの作り方

砥石を上の写真の様に削って
ハリを立て
こてを使って
ハンダを穴に流し込みます。

これで色んなハリで
気に入った重さのハリが
完成です。

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